野村研究室訪問記    2003.6.4

湘南改造家では、住宅改修を望む利用者さんと施工事業者との仲立ちをすることで、在宅介護の環境を整備していこうと考えています。
その際、見積りの比較だけでは事業者さんの特徴があらわれません。そのほかに客観的な評価を添えて、その2点で利用者の判断を広げられるようにしたいのですが、その評価方法をどうするか、こちらでは決めかねる部分がありました。
そこで、日本大学の野村教授に、こちらで考えた評価案に対してご意見をいただきに伺いました。
 野村教授は、福祉や医療と建築が関わる分野の研究・実践で30年以上前から活躍されている、建築のバリアフリー研究の第一人者です。
今年の3月には横浜のハウスクエアで行われた教授の講演を僕も聞きに行き、予想を超えてとても実践的な内容だったので驚きました。
10年前に僕が学生として出入りしていた、御茶ノ水の日本大学の9号館6階に野村教授の研究室はあります(写真)。
アースカラーのシャツにベージュのパンツという気さくな格好で室内に迎え入れてくれた野村教授は、こちらのNPOの状況についてひととおりの質問をしたのち、こちらが持参した評価方法の素案に目を通していきます。
その案は、こちらに登録した施工事業者(介護保険ではこの言葉を使うため、業者という表現はしないと教えられました。お恥ずかしい限りです…)とその事業者に改修を依頼した利用者双方に、工事が終わった後で簡単な採点式(各項目5点満点)の調査票に記入していただき、その合計点の平均をグラフ(6項目の質問を6角形に表示)にするものです。
ポイントは、利用者の採点よりも事業者の採点が高かった場合、その差を自動的に合計点から引くことです(一種のペナルティとして、差に1.2程度の数を掛けて引くことも考えられます)。
つまり、事業者側は利用者が自分たちの仕事をどう評価しているのか、厳しい目で見る必要があるために辛目の採点をする必要がでてきます。そのために自分たちの仕事にも緊張感が生まれ、最終的には事業者の改修能力の底上げになるのでは、と考えました。
もうひとつの特徴としては、両者に各項目で改善項目を記入してもらうのですが、その内容が一致していた場合には、問題点を事業者が正確に把握しているということになるので合計点に1点の割増をします。そうすることで、事業者が自分たちの問題点を洗い出す動機付けができるわけです。
こちらではかなりいい線をいっていると思った案なのですが、しかし野村教授の指摘は鋭いものでした。
まず、このやり方では採点が低い事業者はまったくメリットがないため登録から外れていくだろう、ということ。そのためには、登録業者に対して定期的に研修会や改修事例の学習会をおこない、学習意欲のある事業者が自助努力できる環境をつくることが必要だろうとのことでした。
また、採点基準の6項目のバランスや、その集計方法は基本的には良いとのことでしたが、その6項目に対してはっきりした評価軸の名前(工事前説明、契約書の内容、施工の評価など)を付ける必要があることと、この評価のしかたでは、その事業者の得意とする分野などの特徴(手すりは得意だが便器の交換はやらない)などが表れないため、その分野別の集計が必要になるだろうとの指摘もいただきました。
そのあと、藤沢、鎌倉地域の現状をお話ししたり(そういえば鎌倉の住宅改修についての試みは全然聞かないなあ、とのことでした…)、湘南改造家が住宅改修の提案をするのであればやはり理学、作業療法士それぞれの参加が必要になるだろう、とのお話もありました。そして、今日いただいた指摘をもとに修正した評価計画を、後日ふたたび野村教授に見ていただくおねがいをして、野村研究室を後にしました。
この評価計画は湘南改造家が施工事業者との緊張感のある良い関係を保つための重要な部分なので、しっかり煮詰めていこうと思います。

湘南改造家代表    橋本洋一郎

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